生きるとは、自分の物語をつくること 小川洋子/河合隼雄
作家小川洋子と臨床心理学者河合隼雄の対談集。
第一章の「魂のあるところ」では「博士の愛した数式」について数学科出身でもある河合氏の考察が興味深かった。
第二章の「生きるとは、自分の物語をつくること」ではカウンセリングの現場の話などが具体的に語られていて心の問題を抱えている子どもを持つ親としてはとても参考になった。
・了解不能というのは人間を不安にする。安心したいために相手を置き去りにして自分が早く了解する。
・言葉より沈黙の方が心地よいときがある。
・人間は矛盾しているから生きている。命というのはそもそそ矛盾を孕んでいるものであって、その矛盾をごまかさず自分はこういうふうに矛盾しているんだとか、なぜ矛盾してるんだということを意識して生きていくよりしかたない。矛盾との折り合いのつけ方にこそその人の個性が発揮される。
・カウンセリングはちゃんと話を聴いて、望みを失わない限り、絶対大丈夫。不登校の子が「学校に行けなかった」と言ったとき、「でも行けるよ」と言うのは行けなかった悲しみを受け止めていない。「そうか」と言って一緒に苦しんでいるんだけれど、望みは失っていない。望みを失わずにピッタリ傍にいる。
・励ましの言葉はむしろ中途半端に放り出していることがある。「頑張れよ」というのは「さよなら」と切っていること。「 あなたが持ってきた荷物は、私も持っていますよ」という態度が大事。
・ダメだと思い込んでしまったら、本当にダメだと相手も不安になる。
第三章の「二人のルート」では河合氏の死亡により対談が中途半端に終わってしまい小川さんが追悼文を長すぎるあとがきとして書いている。次の対談は「ブラフマンの埋葬」の話をするということだったのでとても残念。この作品を私は読んでいなかったけれど、「博士の愛した数式」のように河合氏がどのような読み方をしたのか、ユングとブラフマンの話が聞きたかった。